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ハモグリバエ 生態と防除

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国内で農業害虫とされるハモグリバエは下記の8種です


*イネヒメハモグリバエとイネカラバエの寄主作物は
イネ科植物ですので、この2種の詳細説明は割愛します。

以下
ハモグリバエ科の6種すべてを示すとき
「この6種」と表記します。
ハエ目(Agromyzidae)
ハモグリバエ科(Diptera, Insecta)に属する

・トマトハモグリバエ(学名: Liriomyza sativae)
・マメハモグリバエ(学名:Liriomyza trifolii)
・アシグロハモグリバエ(学名: Liriomyza huidobrensis)
・ナスハモグリバエ(学名: Liriomyza bryoniae)
・ネギハモグリバエ(学名: Liriomyza chinensis )
・ナモグリバエ(学名: Chromatomyia horticola、別名:エンドウハモグリバエ)

双翅目ミギワバエ科に属する
・イネヒメハモグリバエ(学名Hydrellia griseola、別名:イネミギワバエ)
・イネカラバエ(学名:Chlorops oryzae、別名:イネキモグリバエ)

などのハモグリバエの総称で、主に幼虫が食害する害虫です。


[ハモグリバエ 生態と防除]


■ハモグリバエの被害

この6種は、雌の成虫が葉肉内に産卵します。
ふ化した幼虫は葉の柵状組織や海綿組織を食べ進みます。

食べ進んだ痕は、白くくねくねした筋状のものに見えます。
この食べ進んだ痕が、野菜や花卉類に被害を与えます。

トマトやナスなどの果菜類では、
収穫対象の果実には、
ハモグリバエの加害がないので、加害量が少ないときは
生産物の収量と品質に影響はでません。

一方、葉野菜や花卉類では、
収穫対象の葉が直接被害を受けるので、
加害量はわずかでも
生産物の品質を著しく低下させる原因となります。


■ハモグリバエの生態

・ハモグリバエ 生態
この6種はどれも高温環境を好みます。
6~10月にかけ、多く発生します。
施設栽培では年間を通して発生が見られます。

幼虫被害は、成熟した下位葉から始まります。
作物の生育に従って、上位葉に被害が拡がります。

幼虫期間は3日くらいです。
その後、ナモグリバエ以外は葉から脱出し、
地上などで蛹になった後、8日くらいで成虫になります。

・在来種、渡来種
日本国内で
農業害虫として問題となっていたハモグリバエは、
1989年時点ではネギハモグリバエ、ナモグリバエ、ナスハモグリバエの3種でした。

1990年にマメハモグリバエが静岡県と愛知県で
1999年にトマトハモグリバエが沖縄県、山形県、京都府で
2001年アシグロハモグリバエが北海道で
初めて発生を確認されました。

・ハモグリバエ 寄主作物
ナスハモグリバエは
キク科植物には寄生しません。

ネギハモグリバエは、
ユリ科のネギ属だけに寄生します。

ナモグリバエは
マメ科で多発する傾向があります。

マメハモグリバエは、
キク科、セリ科、マメ科の各植物を好みますが、
イネ科、バラ科(イチゴやバラ)、ヒルガオ科(サツマイモ)では食害や産卵はしません。

アシグロハモグリバエは、
マメハモグリバエより寄主範囲が広く、
ウリ科で多発する傾向があります。

トマトハモグリバエは、
マメハモグリバエの寄生の少ない
ウリ科の植物やハクサイで多発する傾向があります。


hamoguribae.JPG
ハモグリバエの痕跡


以下、それぞれのハモグリバエの主な寄主作物です。

[ナスハモグリバエ 寄主作物]
ナス科:ジャガイモ、トマト、ナス
ウリ科:キュウリ、スイカ、メロン
アブラナ科:ハクサイ、ダイコン

[ネギハモグリバエ 寄主作物]
ユリ科:タマネギ、ネギ、ニラ、ラッキョウ

[ナモグリバエ 寄主作物]
マメ科:エンドウ、ソラマメ、インゲン、ササゲ、アズキ、ダイズ、スイートピー
キク科:レタス、シュンギク、キク、キンセンカ、アスター
アブラナ科:ハクサイ、ダイコン、キャベツ、カブ
ナス科:トマト
ウリ科:メロン、スイカ   他

[マメハモグリバエ 寄主作物]
キク科:キク、マリーゴールド、レタス
セリ科:セロリ
ナス科:トマト、ナス、ジャガイモ
マメ科:ダイズ、インゲン、
ウリ科:キュウリ、メロン
アブラナ科:ハクサイ、ダイコン、チンゲンサイ
アカザ科:ホウレンソウ、
ネギ科:ネギ    他

[アシグロハモグリバエ 寄主作物]
ナス科:トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、ジャガイモ、ペチュニア
ウリ科:カボチャ、キュウリ、マクワウリ
キク科:レタス、ゴボウ、シュンギク、キク、マリーゴールド、ヒマワリ
アブラナ科:チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ、ミズナ、ナバナ
セリ科:セロリ
ユリ科:ネギ
アカザ科:ホウレンソウ、テンサイ、シロザ
マメ科:インゲンマメ、ダイズ、アズキ   他

[トマトハモグリバエ 寄主作物]
ナス科: トマト、ナス、ピーマン
ウリ科: キュウリ、メロン、カボチャ、スイカ、ヘチマ
マメ科:インゲン、ソラマメ、アズキ、ダイズ、ササゲ
キク科: マリーゴールド、ゴボウ、シュンギク
アブラナ科: ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ、コマツナ、ブロッコリー
アオイ科:オクラ   他


■ハモグリバエ対策

この6種とも多発してしまうと防除が困難になります。発生予防に重点を置きます。

・年間を通して
・圃場周辺の雑草が寄主植物である可能性もあります。圃場周辺の除草に努めます。
・幼虫などの寄生した作物残渣や植物残渣は、発生源になります。これら残渣は圃場外の土深くに埋めるか、
ビニールシート等で被覆して虫を死滅させるなどの処理を行い、新たな発生源とならないよう、防除を行います。

・定植時
・食害や産卵の痕のある苗は植えません。
・施設栽培では、侵入経路の開口部を徹底的に絶ちます。

・生育期
・発生初期から薬剤防除対策をします。
・薬剤抵抗性のあるハモグリバエに対しては、同系統の薬剤を連用や輪用を避けます。
・成虫は黄色が大好きなので、黄色粘着トラップを設置し、発生状況や薬剤効果の把握ができます。

・天敵
・寄生性天敵:寄生蜂です。在来の寄生蜂も数種類確認されています。
・捕食性天敵:カメムシ、クサカゲロウなどがいます。